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合同会社で農地所有適格法人を設立する人が増えているみたいだけど、メリットはあるのか?

投稿日:2021.04.20

農地所有適格法人を設立するときの形態は、「株式会社(非公開会社に限る)、持分会社又は農事組合法人」と決められています。
持分会社とは、合名会社、合資会社、合同会社の3つの総称です。
合名会社と合資会社は昔からある形態ですが、合名会社は出資者の全員が無限責任となり、合資会社は最低でも1人の出資者が無限責任になると決まっています。無限責任とは会社の負債を出資者が個人で無限で負担するという意味です。
ただ銀行からの借金であれば、出資者が代表となった場合、連帯保証人の契約を締結するので同じではないかと考えるかもしれません。ところが、負債とは銀行からの借金だけではなく、農薬を仕入れたことによる買掛金、農業用設備を分割で買った場合の未払金、または他人に対する損害賠償金なども含まれるのです。
倒産することを前提に農地所有適格法人を設立するわけではないはずですが、突発的な事故が起きたときに、出資者が無限で責任を負うとなると設立を躊躇してしまいます。
 
ということで、世の中では、出資者全員が出資した金額までの責任しか負わない形態となっている株式会社、または合同会社での設立がほとんどなのです。
株式会社とは、多数の株主からお金を出資してもらい、プロの経営者が事業を運営することが前提となっています。そのため、株主総会、取締役、監査役などの組織の設計については強行規定であり、株主が取締役をけん制する形態となっています。さらに株主は出資割合に応じて議決権を持つため、必然的に多数決で意思決定することになり、少数株主の権利は限定されてしまいます。

一方、合同会社とは、数人の出資者が集まって事業を行うことが前提となっているため、定款で決めれば、自由に組織を設計することができます。また出資割合に応じた議決権ではなく、1人1票となっているため、出資金額が少なくても発言力があります。さらにその定款を変更するためには、出資者全員の同意が必要となるため、勝手に不利な立場に追いやられることはありません。また「出資者=取締役」となって事業を運営するため、お金を出資した人が自動的に経営者となり、組合的な組織が想定されていると言えます。
例えば、Aさんが90%を出資して、Bさんが10%を出資した場合でも、議決権は1票ずつとなり、出資者が2人ならば50%ずつとなります。そしてAさんもBさんも、原則、業務執行権と代表権を持つことになります。つまり、AさんとBさんの権限は同等なのです。また定款を変更するまでもないことは、出資者の過半数の賛成で意思決定することになります。それでも2人で合同会社を設立した場合には、Aさん1人では50%の議決権しかなく過半数を超えられないため、結果的にBさんの同意が必要となります。
そしてここが重要なのですが、利益配当の振り分けも自由に決めることができます。
例えば、Aさんさえ同意すれば、合同会社の利益を50%ずつで分けてもよいのです。
ではなぜ、90%も出資するAさんが不利な立場となることに納得して合同会社を設立するのでしょうか?
 
それはAさんが、Bさんがいなければ、そもそも農業の事業が始められないという理由があるからです。合同会社の形態をとれば、Bさんを誘いやすくなります。
ここまで説明されても、合同会社なんて聞いたことがないという方もいるかもしれません。それでも平成29年度に全国で設立された株式会社の数が91,379件に対して、合同会社の数は27,270件にもなっているのです。
新しく設立される法人の約23%が合同会社というのが現実です。

なお合同会社の形態で農地所有適格法人を作ったが、やっぱり株式会社の方がよかったと考えることもあるかもしません。例えば、事業を拡大したいので、もっと多数の人たちにお金を出資してもらいたい、ただそのときに出資者と経営者を分離したいなどの理由からです。
その場合には組織変更について出資者全員の同意があり、債権者保護手続きとして官報公告を行えば、株式会社に変更できます。
このとき、実費が多少かかりますが、合同会社に法人税や出資者に所得税などは一切かかりません。

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