「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

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従業員に対して、個人事業主のときに1回目、農地所有適格法人のときに2回目の退職金が支払えます。

投稿日:2018.08.24

所得税は累進税率ですので、給料に比例して税率が上がるわけではありません。
給料が増えると一気に税率が上がってしまうのです。
例えば、年収360万円であれば約36万円の所得税(住民税も含む)となり、実効税率は10%です。ところが、年収が2倍の720万円となると約115万円の所得税(住民税も含む)となり、実効税率は16%に上がってしまうのです。
また給料が増えると所得税だけではなく、国民健康保険料または社会保険料も上がります。
この所得税を節税しようとすると、退職金を支払う方法しかありません。
退職金をもらった場合には、下記で計算された退職所得に所得税率を掛けあわせることになります。

( 退職金 - 退職所得控除額 ) × 1 / 2 = 退職所得の金額 (1)勤続年数が20年以下の場合
退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数
(ただし、80万円に満たない場合には、80万円)
(2)勤続年数が20年超の場合
退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 -20年)

例えば10年間働いて、360万円の退職金をもらったとすれば、所得税はゼロ円です。
2倍の760万円をもらったとしても、所得税は27万円(住民税も含む)となり、先ほどの115万円と比べるとかなり低くなっています。しかも退職金は国民健康保険料を計算するときも、社会保険料を計算するときも、対象外となります。つまり、かかりません。
そのため、給料をもらうよりも、退職金としてもらう方が断然得なのです。
ところが農業の個人事業主は自分に退職金を支払うことができません。また同居している妻や子供が農業を手伝っていて給料を支払っている場合にも、退職金を支払うことができません。一方、農地所有適格法人の代表取締役や取締役に就任すれば、誰であっても退職金をもらうことができるようになります。
それでは、農業の個人事業主のもとで働く従業員に退職金を支払うことはできるのでしょうか?
配偶者や子供ではない従業員であれば、個人事業主から退職金を支払うことができます。単純に辞めるときだけではなく、農地所有適格法人を設立したときには、全員に退職金を支払うことができるのです。
また引き続き農地所有適格法人で働く従業員に対して、法人を退社するときに、もう一度退職金を支払うことができます。ただし、個人事業主のときの勤続年数も含めて、法人で退職金を支払うときの退職所得控除額を計算することはできません。あくまで農地所有適格法人で働いた期間だけで計算します。

農地所有適格法人を設立するときに、個人事業主として退職金を支払うためには、退職金規定を作成しておかなければ税務上は認められません。そして下記の4つのことを必ず行ってください。
① 退職金規程を作成して、退職金の支払い事由に法人設立時を明示しておく。
② 退職金の支払額の計算は、退職金規程に基づき適正に行う。
③ 農地所有適格法人を設立するときに、退職金を支給する旨を全従業員に周知する。
④ 退職所得の受給に関する申告に、全従業員の自書と押印を求める。

なおときどき、「従業員に退職金を支払うことは、本当に有用ですか?」と聞かれることがあります。
農業に限らず、すべてのビジネスに共通することですが、従業員が辞めずに長く働いてもらった方が絶対に儲かります。
新しく従業員を雇うためにはコストもかかりますし、仕事を教える労力も必要です。
もし従業員を辞めさせたくないと考えるのであれば、長く働くとメリットがある制度を導入すべきです。その中でもっとも効果が高い制度が、退職金だと思うのです。
一時期は退職金規定を作らないという個人事業主や会社がたくさんありましたが、最近では人手不足の中で従業員を辞めさせない制度として、導入する事例が増えています。
農業所有適格法人を設立するときに退職金を支払えば、従業員はそのメリットに気づきます。そのことが農業所有適格法人でも長く働くモチベーションにつながるはずです。

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