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従業員に決算賞与を支払えば、やる気を引き上げるだけではなく、農地所有適格法人の経費にもなります。

投稿日:2017.08.02

農地所有適格法人では、当然ですが役員と従業員のそれぞれに対して賞与を支払うことができます。
ただ、それぞれで賞与を支払うときには、注意が必要です。
まず役員に対しては、通常の賞与を支払うと経費になりません。
経費にならなくても所得税はかかるため、例えば100万円の役員賞与を支払うと、30%の法人税と40%の所得税がかかり、合計で70%もの税金が発生します。
手取りは30万円しか残りません。
そもそも法人税では、決算日のあと3ヶ月以内の株主総会で役員の月額報酬を決定したら、そこから1年間はずっと同額でなければいけないとされているため、これを破ると高い税金がかかるのです。
もし役員が月額報酬を上げたり、下げたりしたい場合には、次の株主総会まで待って決定することになります。

なぜこのような規制があるのでしょうか?
それは法人税率と所得税率が違うため、決算期末になって、農地所有適格法人が儲かっていれば役員の月額報酬を上げることで、より安い所得税を支払う選択ができます。
または農地所有適格法人が儲かっていなければ役員の月額報酬を下げることで、より安い法人税を支払うことを選択できることになります。
つまり、農地所有適格法人の役員が自分の月額報酬を変更することは簡単であり、それだけで節税できてしまう方法を防いでいるのです。
ただ例外もあり、事前に支払う役員賞与を決めておき、税務署にその金額を申請しておく場合には、役員賞与も経費になります。
それでも事前に決めておくならば、その賞与を12分割して月額報酬に上乗せしても同じことです。
そのため、役員賞与を支払う農地所有適格法人はほとんどありません。

一方、従業員の賞与はどうでしょうか?
従業員は自分の給料を自由に変更できないことから、農地所有適格法人が支払った賞与はすべて経費になります。
また雇用契約書で賞与の金額が決まっていたとしても、通常は「農地所有適格法人の財政環境等を鑑みて支給する」という文言が入っています。
そのため、事前に確定しているわけではないのですが、従業員の賞与は全額が経費になるのです。
ただ、支払い方を工夫しなければいけません。
例えば、農地所有適格法人の決算日が9月末で、従業員の賞与が1年に1回12月に支払われるとした場合、決算日には12月に支払う賞与の一部も経費に計上することができないのです。
賞与とは12月だけの労働の対価ではなく、それまでの1年間の対価であるはずなのにです。

ということで、従業員に賞与を支払う約束をする場合には、決算日が属する月に支払うことをお勧めします。
これを聞くと、「農業は1年間の売上や利益が読めないので、最初から従業員に支払う賞与を決めずに、決算日に農地所有適格法人に利益が出ていたら賞与を支払うことにしたい」という人もいます。
普通に考えれば、9月末が決算日の農地所有適格法人が、それ以降に賞与を支払えば、先ほどと同じで経費にならないはずです。
ところが3つの条件を満たす場合だけ、経費になるとされているのです。これを決算賞与と呼んでいます。

決算賞与を経費にするための3つの条件
① 賞与の支給額の通知
事業年度の終了日までに、各従業員に対して支給額を通知すること。そのとき、同時期に支給する従業員全員に通知することが必要となる。
② 1ヶ月以内の支給
事業年度の終了日から1ヶ月以内に、現実に賞与を支払っていること。
③ 経理に計上
支給額につき、決算書に賞与として計上していること。ただし決算日では支払っていないため、未払金での計上となる。

これにより、その事業年度で儲かった利益を無駄なく従業員に配ることができます。来年のやる気を引き出すためにも、決算賞与を上手に利用すべきです。
なお、役員賞与に関しては、3つの条件をクリアしても経費には認められないため、注意してください。

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