「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

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農地所有適格法人であれば、減価償却費の金額を自由に変更できて、かつ赤字も将来へ10年間も繰り越せます。

投稿日:2017.06.01

個人事業主でも、農地所有適格法人でも、農業は車両や農業機械設備に投資することが多くあります。固定資産を保有すると、一度には経費にならず、税法で決められた耐用年数で減価償却費という方法で経費を計上していくことになります。農地所有適格法人ではこの減価償却費を任意で計上できるというメリットがあります。

例えば、下記のような損益の農地所有適格法人があるとします。

 

1年目

2年目

3年目

4年目

売上高

5000万円

1000万円

5000万円

5000万円

給料合計

1000万円

500万円

1000万円

1000万円

給料以外の経費

2500万円

2500万円

2500万円

2500万円

減価償却費

1000万円

1000万円

1000万円

1000万円

税引前利益

500万円

▲3000万円

500万円

500万円

法人税

150万円

0円

0円

0円

税引き後利益

350万円

0円

500万円

500万円

1年目と3年目、4年目は通常の収穫ができましたが、2年目だけは天候不順であったり、台風等の災害によって、売上が大幅に下がってしまいました。2年目の給料に関しては、代表取締役の報酬はゼロとしましたが、パートの社員には給料を支払わなくてはいけません。また収穫できる寸前まで経費はかかっていましたので、給料以外の経費が下がることもありませんでした。そのため、2年目は大きく赤字が発生しています。ただ農地所有適格法人であれば、この2年目の赤字は将来10年間も繰り越すことができます。

資本金が1億円超の農地所有適格法人は別ですが、資本金が1億円以下の農地所有適格法人であれば、翌年度からの利益と赤字を制限なく通算できるのです。そのため、3年目、4年目では500万円の利益が出ていますが、法人税はゼロ円となります。このままであれば、10年間のうちに3000万円の赤字は使えそうです。これは農地所有適格法人の資金繰りをかなり改善することにつながるはずです。

と考えていたところ、5年目にまた天候不順や台風等の災害によって2年目と同じ売上に落ち込んだのです。また3000万円の赤字となりました。2年目の赤字がまだ2000万円も残っているため、合計で5000万円の黒字を将来出さないと消えてしまいます。もしその自信がなければ、農地所有適格法人は減価償却費を任意に計上しないことができるのです。

これにより、5年目の赤字は2000万円に圧縮できます。それならば、2年目も減価償却費を計上しなければよいのです。この減価償却費の計上の選択は、事業年度の最初に行う必要はなく、決算書を税務署に提出するまでに決めればよいのです。しかも、2分の1だけ、3分の1だけなど、上限までの金額であれば自由に調整することができます。

 

5年目

売上高

1000万円

給料合計

500万円

給料以外の経費

2500万円

減価償却費

0円

税引前利益

▲2000万円

法人税

0円

税引き後利益

0円

それでは、個人事業主にも同じような制度があるのでしょうか?

下記は、先ほどの農地所有適格法人が個人事業主であった場合の損益となります。給料合計はパートの給料だけで、最後の税引き後利益が個人の事業主の手取りとなります。

 

1年目

2年目

3年目

4年目

売上高

5000万円

1000万円

5000万円

5000万円

給料合計

500万円

500万円

500万円

500万円

給料以外の経費

2500万円

2500万円

2500万円

2500万円

減価償却費

1000万円

1000万円

1000万円

1000万円

税引前利益

1000万円

▲3000万円

1000万円

1000万円

所得税

270万円

0円

0円

0円

税引き後利益

730万円

0円

1000円

1000円

個人事業主の最後の税引き後利益が大きくなっていますが、農地所有適格法人の場合には役員報酬を500万円支払っているため、通常の収穫の年度は残るお金はほとんど変わりません。問題は、個人事業主の場合には、赤字が3年間かしか繰り越せないことです。

そのため、2年目の赤字が3年目と4年目の利益と通算できていますが、5年目に赤字が発生したとすると、2年目の残りの赤字1000万円は切り捨てられてしまうのです。しかも、個人事業主の場合には減価償却費の金額を任意に選択することができず、強制的に上限金額が計上されてしまうのです。そのため、2年目も、5年目も赤字は3000万円となります。

このように個人事業主は赤字を上手に調整して、将来の利益と通算できない仕組みになっています。農業は、どうしても天候や突発的なことで赤字になることがあります。その赤字を調整できるという観点から見れば、個人事業主ではなく、農地所有適格法人として経営していた方が断然有利と言えるでしょう。

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