「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)設立コンサルティング | 日本中央税理士法人 Tel. 03-3539-3047 担当:青木

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どの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を作るか

株式会社にして、一気にお金を調達する

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、5つの種類があります。
ただその中で、合名会社や合資会社はデメリットの方が大きく、今から設立する人はほとんどいません。(現時点で、合名会社や合資会社の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)があれば、組織変更しておかないと、子供が相続できない事態になることもあります。手続きは難しくないので、今すぐに、組織変更しておきましょう)

そこで、残りの3つの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に絞り、比較してみました。
3つとは、株式会社、合同会社、農事組合法人のことです。

株式会社合同会社農事組合法人
法律 会社法 農業協同組合法
事業内容 農業、農業関連事業及び、林業、
キャンプ場、造園など、農業非関連事業
農業、農業関連事業
及び林業のみ
構成員名称 株主 社員 組合員
資格 ① 農業に常時従事する社員(1年間で150日以上)
② 法人へ農地を売る、貸す、現物出資をする個人
③ 地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会
④ 農地保有合理化法人、農業法人投資育成会社
⑤ 法人に農作業の委託を行っている農業者
⑥ 継続的取引関係を有する個人、法人
(※地方公共団体など、農事組合法人には出資できない団体もあります)
人数 1名以上 3名以上
議決権 1株1票制度 1人1票制
配当 給料のみ 給料、または従事分量配当
役員人数 取締役1人以上 社員が業務執行 理事1人以上
監査役 監査役は任意で設置 必要なし 監事は任意で設置
任期 最長で10年間 制限なし 3年以内
社員 制限なし 組合員とその同一世帯で
3分の1超とする
資本金 制限なし
登録免許税 資本金の7/1000 非課税
税金配当 経費にならない 経費になる
(給料はならない)
法人税 資本金1億円超 25.5%
資本金1億円以下
800万円以下の利益部分 15%
800万円超の利益部分 25.5%
構成員の給料がゼロ
協同組合は一律 15%
構成員に給料を支払う
800万円超の利益部分 19%
事業税 通常の法人と同じ 原則、非課税
決算公告義務 あり なし
組織変更 農事組合法人への変更はできない 株式会社への変更は可能

この表から分かることは、最初、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を立ち上げるのであれば、農事組合法人で運営した方が、税金は、かなり得になるということです。
特に、農事組合法人は、構成員(農事組合法人では、組合員と呼ぶ)に対する配当を、従事分量配当という制度を採用すれば、経費にすることができるのです。
給料ではなく、あくまで配当なので、農事組合法人の利益を計算してから決めることができます。
つまり、組合員に対して、従事分量配当で支払うか、通常の給料にするかは、毎年、事業年度の終了後の定時株主総会で決定して、遡って適用すればよいのです。
しかも、税務署へ事前に届け出る必要もありません。
毎年、組合員にとって、得な方を採用できます。
組合員にとっては、事業所得となりますが、農事組合法人は協同組合とみなされて、その利益に対する法人税も安くなり、事業税もかかりません。
さらに、組合員に給料を支払うと、そこには消費税が含まれていません。
一方、組合員に支払う従事分量配当には、消費税が含まれているとみなされます。
そのため、農事組合法人が支払う消費税も、かなり削減できます。

ということで、あなたは、
「農事組合法人の利益は、すべて従事分量配当で配ってしまえばよい」
と考えるかもしれません。
ただ無条件で、従事分量配当が経費になるわけではないので、そこは注意が必要です。

区分性質経費
①利用(事業)分量配当 組合員が1年間で取り扱った農作物の量、価格、その農事組合法人の事業を利用した分量に応じて配当する
②従事分量配当 組合員が1年間に、農事組合法人に従事した程度に応じて配当する
③出資分量配当 組合員の出資の割合に応じて配当する ×

①と②であれば、農事組合法人は、先ほどからの説明のとおり、協同組合とみなされて、配当を経費にすることができます。

このとき、組合員が従事した日数や時間を集計するだけではなく、「仕事の内容、責任の程度」に応じて、従事分量配当の金額を変更しても問題ありません。

あなたが、農事組合法人のメリットを聞けば、
「ずっと、このままでよいのでは?」
と言うかもしれません。
それでも、農事組合法人が、毎年、組合員に十分な配当を支払えるようになってきたら、株式会社である農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に組織変更すべきです。

というのも、株式会社という組織のメリットは、資金調達にあるからです。
農事組合法人では、1人1票のため、1000万円を出資した組合員も、100万円を出資した組合員も、同じ議決権しかありません。
出資した金額に応じて配当すると、協同組合とは見なされなくなってしまいます。
この制度では、この組織に、多額の出資をしようという個人や法人が現れることはありません。
資本金が大きくならなければ、銀行からの融資の枠も、それに比例して小さいままです。

一方、株式会社であれば、出資した金額が多い人の議決権がそれに比例するため、個人も、法人も参加しやすくなります。
資本金が増えて、自己資本比率が高くなれば、銀行の融資も、それに比例して増やすことができるのです。
例えば、あなたがマンションを買うときにも、頭金は必要です。
同じように、農業に限らず、ビジネスをやるときにも、自己資本という頭金を用意した方が、銀行としては融資を承認しやすくなるのです。
しかも、その頭金が多いほど、借りられる金額も大きくなるのは、当然です。

銀行からの融資

あなたが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の規模を拡大させ、大量に収穫した農作物を出荷して、十分な利益を得るためには、株式会社の形態で行うことが、やはりお勧めです。
もし最初から、大規模なビニールハウスや生産設備を導入したり、農作物を保存する冷蔵倉庫を作るために、多くの個人や法人を株主として募集するならば、株式会社を設立してもよいでしょう。
なお、畜産経営をやる場合には、農事組合法人にしても事業税が非課税とならないなど、あまりメリットがないので、最初から株式会社の形態で農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立すべきです。

当社では、いつの時点で、どのような形態の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立すべきか、という助言だけでなく、その設立の手続きも行わせて頂いております。
あなたが、「農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立したい、または今の組織を変更したい」と考えているならば、今すぐ、当社まで、お問い合わせください。

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事例から学ぼう

高橋さんは、農事組合法人として、3人の組合員と一緒にトマトを収穫して出荷してきました。
農地はかなりの広さにはなるのですが、今の生産方法では、飛躍的に10a(1反)当たりの収穫量を増やすことはできません。
現在でも、一定の利益は出ているものの、高橋さんは、もっと効率よく10a当たりの収穫量を増やす方法を探っていました。
あるとき、オランダで、巨大なプラスチックハウスの中に生産設備を導入して、植物工場で栽培している農場を視察したのです。
過去の収穫量の実績を見せてもらうと、10a当たりの収穫量は、自分たちの5倍にもなるのです。
ただ、プラスチックハウスやそれ以外の生産設備の見積もりを取ったところ、2億円という金額でした。
これを銀行の融資だけで調達できるはずがありません。

そこで、高橋さんは、農事組合法人を株式会社に組織変更して、大企業を中心に、オランダの実績を、自分なりにアレンジした資料を作ると、それを持って説明に回りました。
植物工場の生産設備を買うための1億円の補助金の申請も受理されたことで、資金調達の金額は半分の1億円に下がりました。

結局、収穫したトマトの一定量を卸すことを約束した会社が、1億円を出資してくれました。
高橋さんは、無借金で植物工場を建てて、運営することができたのです。
それから4年が経ち、トマトの収穫量もかなり増えてきたので、販売会社も設立して、大きなスーパーとも取引を始めています。
農事組合法人で農業を行っていたときと比べて、利益は10倍以上に増えました。
さらに、高橋さんには、儲かった利益でやりたいことが、3つあります。
① 植物工場の生産設備を改良して、収穫量を増やす
② オランダで、日本人の口に合うトマトの種の研究開発を行う
③ 他の地域で農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を立ち上げて、地元の会社から出資を募る