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農業最前線ニュース

肉用子牛を売却したときの利益には、税金がかからないんです。

投稿日:2017.01.18

個人事業主の農業者でも、農業法人でも、下記以外の牛を売却したときには、年間1500頭までは税金がかからないという特例を受けることができます。
正式名称は「肉用牛売却所得の課税特例措置」と言いますが、「肉用牛免税」と呼ばれています。


肉用牛免税の対象とならないもの
① 種雄牛
② 肉用牛の子取り用雌牛で、固定資産に該当する牛
③ 乳牛の雌のうち、子牛の生産の用途に使われた牛(経産牛、妊娠牛)
④ 100万円以上で売却された肉用種の牛で、高等登録牛又は育種登録牛ではない牛
⑤ 80万円以上で売却された交雑種の牛
⑥ 50万円以上で売却された乳用種の牛
⑦ 飼養期間が2カ月未満の牛


通常は「肉用種の牛(肉用子牛)」の取引がほとんどだと思いますので、④に該当しない100万円以下で売却できれば、肉用牛免税を受けることができます。
つまり、年間1500頭までは1頭につき100万円の取引に対して、一切の所得税も法人税がかからないことになるのです。
1年間で1500頭の取引を超えることは少ないと思いますが、超えた場合でも自分で自由に1500頭までの肉用牛免税の特例を受けさせる取引を選べます。かなり優遇された特例措置なので、肥育農家であれば、必ず受けるべきです。ただ最近は、肉用子牛が100万円以上の取引となることも増えてきています。この場合、個人事業主ではなく、農業法人で肉用子牛を取引すると税金を抑えることができるのです。

まず、個人事業主が100万円以上、または1500頭超の肉用子牛を売却した場合には、収入金額に所得税5%と住民税1.5%の分離課税が適用されます。例えば、120万円で売却されたとすれば、「120万円×(5%+1.5%)=78000円」の所得税がかかるのです。
一方、農業法人の場合には分離課税とはならず、単純に売上として計上して経費を差し引いた結果、利益が発生すれば法人税がかかることになります。もし経費が大きければ利益は発生せずに法人税はかかりません。
また、個人事業主の場合、肉用牛免税の特例を受ける前の農業所得が黒字であると、確定申告書で赤字となったとしても、翌年以降に繰り越すことができません。
一方、農業法人であれば、経費を差し引いた結果が赤字であれば、翌年から10年間も繰り越すことができて、将来の利益と通算できるのです。

項目 個人事業主 農業法人(農地所有適格法人)
基本的な免税のしくみ 個人が肉用子牛を売却したことで発生する農業所得を免除する。 農業法人が免税対象となる肉用子牛を売却したことによる利益を、経費として計上できる。
免税対象以外の肉用子牛の取り扱い 免税基準価額以上、または売却頭数要件を超える肉用子牛の収入金額に所得税5%、住民税1.5%をかけて分離課税とする。 通常の利益の計算を行う。
欠損金について 免税の特例適用前の農業所得が黒字であれば、赤字となったとしても翌年には繰り越せない。 免税による経費を計上した結果が赤字となれば、それを翌年から10年間繰り越せる。
とすれば、農業法人を設立した方が得だと考えるはずですが、正しいステップを踏む必要があります。

第1のステップは、農業法2条3項に規定される農業法人を設立することです。
第2のステップは、肉用牛免税の対象となる取引を中央卸売市場等で行う、または産後1年未満の肉用子牛について、農業協同組合等に委託して売却することです。
第3のステップは、税務申告書に肉用牛免税を受けるために必要な書類を添付することです。

また、農業法人の設立時には、棚卸資産に注意が必要です。個人事業主として、かなりの頭数を飼育している場合には、設立した農業法人に棚卸資産として売却することになるからです。個人事業主としての畜産農家は廃業したのに棚卸資産である肉用子牛を所有しているのはおかしな話です。そのままにしていると、農業法人に贈与されたとみなされることもありえます。
もちろん、設立したばかりの農業法人には、お金がないので分割払いで構いません。

さらに棚卸資産を売却すれば、個人は翌年3月末までに多額の消費税を納めなくてはいけません。そこで、農業法人の決算日を早めに切って、消費税の還付を受けてください。それを個人に支払って、消費税の納付に充てることになります。

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