「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)設立コンサルティング | 日本中央税理士法人 Tel. 03-3539-3047 担当:青木

農業最前線ニュース

集落で農事組合法人を設立すれば、消費税が還付されるんです。

投稿日:2016.12.07

農業経営基盤強化促進法に基づいて、農業経営改善計画を市町村に提出して認定を受けると、認定農業者になります。
認定農業者になると、日本政策金融公庫から、低金利でお金を借りることができたり、補助金も有利にもらえたり、雇用に対する研修費の助成制度を受けることもできます。
農地所有適格法人(旧農地所有適格法人(旧:農業生産法人))だけではなく、個人でも認定農業者になることができます。
では、農業経営改善計画とは、具体的には、どのようなものなのでしょうか?

市町村に、農業経営の規模を拡大させて、生産や経営も合理化することで、目標所得を達成することを約束する書類になります。
目標所得は、市町村で変わってきますが、例えば、ある市町村の基本構想には、「年間250日以上農業に従事する農業専従者であり、目標所得が440万円、中山間地においては350万円を5年後には達成する見込みがあるもの」と記載があります。
今まで、民法の任意組合として集落営農を行ってきている方も、多くいらっしゃいます。
ただ、民法の任意組合は法人ではないため、認定農業者を申請することができず、あくまで、構成員が個人で申請するしかありません。
もちろん、上記の目標所得を達成できる人もいますが、難しい人も多いでしょう。
集落営農の中で、格差が生まれてしまうのも良くありません。

そこで、従事分量配当制ができる農事組合法人として法人化するのです。これは農地所有適格法人ではなく、もっと簡易的な組織形態になります。
これで、法人として認定農業者が申請でき、今まで通りの構成員のまま、補助金や助成金を受けることができるようになります。
このような話をすると、①法人化は、設立費用がかかるのでは? ②農事組合法人ではなく、農地所有適格法人にすべきでは? ③10年後、20年後、農事組合法人を担う若者がいるのか? という3つの質問をよく受けます。
まず、①ですが、農事組合法人を設立するときには、公証役場の定款認証が不要で、登録免許税も非課税となっていて、法人化するときの費用は、ダントツで安くなります。
次に、②ですが、農事組合法人は、それほど煩雑な手続きを経なくても、農地所有適格法人に組織変更できます。そのときに、登録免許税以外の税金もかかりません。そのため、最初は農事組合法人で十分なのです。
最後に、③ですが、鶏が先か、卵が先かという話だと私は思っています。つまり、法人化せずに任意組合だから、将来が不安定で担い手が育たないのです。農事組合法人として、組織化されて、従業員も雇い、規模も拡大し、構成員の所得も高額になれば、若い人たちも参加するのです。その中から、次の担い手が生まれるはずです。
何といっても、農事組合法人として認定農業者となれば、補助金がもらえるため、ほぼ黒字化できます。

上記のように説明しても、農事組合法人のような法人化は、集落営農の構成員に説明をして、全員の同意を得るのが面倒だという方もいます。
実は、農事組合法人を設立すると、もう一つ、メリットがあるのです。
それは、毎年、消費税を還付してもらえることです。
農作物などの売上が1000万円を超えていると、消費税を納める法人になります。
農事組合法人となれば、集落営農で合算された売上になるので、1000万円は超えます。
ところが一方で、農事組合法人は、苗や肥料を買う時に消費税を乗せて支払っています。
売上として預かった消費税から、これらの支払う消費税を差し引いて、差額を税務署に納めることになります。
もし支払う消費税の方が、預かった消費税よりも多いと、逆に、その差額を税務署から還付してもらえるのです。
農事組合法人では、ほとんどの場合、この逆転現象が起きるため、消費税が還付されているのです。

理由は、2つあります。
1つ目は、農事組合法人の収入は農作物の売上だけではなく、補助金も含まれます。ところが、この補助金には消費税が含まれないため、預かっている消費税が少ないのです。
2つ目は、従業員に支払う給料は消費税が含まれないため、一般の事業会社では、差し引ける消費税が少なくなります。ところが、農事組合法人が構成員に配分する従事分量配当に関しては、消費税が含まれていると考えるのです。
凡そですが、1ha当たり2万円の還付になると言われています。そのため、30haで60万円の消費税が、毎年、還付されることになります。

ここで、従事分量配当の金額は、どのように決定されるのかと聞かれることがあります。
農事組合法人の利益の中で、自由に構成員が話し合って、決めることができます。
このとき、利益準備金の積立があるため、すべての利益の分配はできませんが、最低でも90%はできます。

なお、農事組合法人の従事分量配当を受け取る構成員が1000万円の売上がなければ、消費税を納める必要はありません。そのため、農事組合法人が消費税を還付してもらうだけ、得になっているのです。
ただ、将来、インボイス方式が導入されると、消費税を納めていない構成員に支払う従事分量配当は消費税込みとみなされなくなります。

お問い合せはこちらをクリック