「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)設立コンサルティング | 日本中央税理士法人 Tel. 03-3539-3047 担当:青木

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父親の自宅のうち、建物だけを農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に売却するだけで、法人税と相続税が同時に節税できる。

投稿日:2016.11.18

個人の農業事業者が、自分の土地の上に、5000万円の自宅を建てるときに、銀行から住宅ローンを借りたとします。
この場合、毎年の12月末における借入金の未返済残高に対して、10年間1%の住宅ローン控除が使えます。
つまり、年度末に5000万円の銀行への未返済残高があれば、その年は50万円の所得控除が受けられるのです。
ただ、あくまで所得控除なので、税金が50万円も減るわけではありません。
あなたの所得税率が30%とすると、「50万円×30%=15万円」の節税となります。
この住宅ローン控除は、10年間続きます。
年度末の未返済残高は下がっていくので、毎年、節税できる金額も減っていきます。
住宅ローンの契約内容でも変わりますが、10年間で節税できる金額は、約100万円です。

多いと思いますか?
100万円が少ないとは言いませんが、10年で100万円なので、多くないですよね。
そこで、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立して、自宅を買ってもらうという方法を提案します。

どうなると思いますか?

実は、自宅を売却すると、そのあと、建物を減価償却できるため、法人税が節税できます。
自宅を建ててすぐ売却するか、もしくは農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で自宅の建物を建てたとすると、合計5000万円の減価償却費が計上できます。
自宅が木造であれば、耐用年数は22年と決まっていますので、22年間で経費が定額で計上されていきます。
このとき、自宅に住む父親や同居している子供は、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に、周辺の相場程度の家賃を支払います。それほど高くはならないはずですが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の売上にはなります。
例えば、1年間の家賃が100万円とすると、22年間で2200万円です。
法人税の税率は30%ですので、「{5000万円(減価償却費)-2200万円(売上)}×30%」で、840万円の節税となるので、住宅ローン控除の特例よりも断然、得です。
これは、新築の自宅でなくても、中古の自宅であっても、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立したあと、父親が売却すれば、その時点での建物の帳簿価格から減価償却できます。
帳簿価格とは、自宅を建ててから、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に売却するまでの期間で、自動的に減価償却費を計算します。
例えば、父親の自宅が5000万円の木造の建物ならば、先ほどの耐用年数よりも延びて33年となります。築10年とすれば、自動的に、「5000万円×(10年÷33年(耐用年数))=約1500万円」が建物の経年劣化として、差し引かれるのです。
つまり、帳簿価格は、「5000万円-1500万円=3500万円」となり、これが農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で減価償却できる上限となるのです。それでも、築10年ならば、住宅ローン控除の特例は使い終わっています。
では、自宅を農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に売却するときに、注意すべきことはないのでしょうか?

1.建物だけを売却すること
農業事業者は、自分の田畑の近く、もしくは田畑を潰して自宅を建てることが、ほとんどです。とすれば、自宅の敷地は、先祖代々から相続してきたはずです。
そのため、父親が土地まで農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に売却すると、買った金額もその時期も分からないため、売却益が発生して、所得税がかかってしまいます。
そこで、自宅の建物だけを帳簿価格で農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に売却すれば、売却益は発生しません。

2.地代を少しだけ支払う
通常は、建物だけを農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に売却しようとしても、土地の借地権も一緒に、売却したとみなされます。
借地権の売却益が発生すれば、父親に所得税がかかります。
そこで、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が将来、自宅が古くなったら取り壊して、無償で父親に更地を返還するという約束をすれば、借地権は発生しないことになるのです。
さらに、建物を所有することになった農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が、地主である父親に、土地の固定資産税の3倍程度の地代を支払うだけで、将来の父親の相続税の節税対策にもなるのです。
そもそも、父親が自宅を所有していて、相続が発生すれば、自宅の土地は路線価の評価、そのままです。
ところが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が地代を支払っていると、相続税を計算するときだけ、土地の評価を路線価の80%に下げてくれるという決まりがあるのです。
では、この土地の20%分の評価はどうなのでしょうか?
これは、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の株価に反映されることになります。
それでも、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の株主を、農業を継ぐ子供にしておけば、このデメリットはなくなり、土地の評価減だけのメリットが受けられるのです。
建物の築年数がかなり古くて、すでに帳簿価格がほぼゼロの場合、法人税は節税できませんが、相続税の節税対策にはなるため、自宅を売却してもよいのではないでしょうか。
なお、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)と父親が土地の賃貸借契約書を締結したら、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を遅滞なく提出しておく必要がありますので、お忘れなく。

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