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農地所有適格法人(旧:農業生産法人)から、退職金をもらえば、全然、手取りが多くなります。

投稿日:2016.10.03

個人の農業事業者は、毎年、農作物の売上から、農業で使った経費を差し引いて、利益を計算します。この利益に対して、所得税がかかるのです。
所得税は累進課税の制度となっていて、利益に比例して税率が上がるわけではありません。
利益が増えると、一気に上がる仕組みです。
例えば、1年間の利益が300万円の農業事業者であれば、所得税は、約42万円(住民税も含みます。以下、同じ)となります。
つまり、所得税の実効税率は、42万円(所得税)÷300万円(利益)=14%であり、それほど高くありません。
ところが、1年間で利益が1000万円の農業事業者となると、所得税は、約260万円にもなります。
このとき、所得税の実効税率は、300万円のときとは違い、260万円(所得税)÷1000万円(利益)=26%に上がっています。
もし、1年間の利益が2000万円の農業事業者となれば、所得税は、約700万円にもなるのです。
所得税の実効税率は、700万円(所得税)÷2000万円(利益)=35%となり、300万円の利益のときと比べると、2.5倍にもなってしまうのです。
所得税は、毎年かかるため、累計されていくと、かなりの差が出てきます。

一方、退職金に対する所得税は、かなり安くなっています。
退職金は、老後の生活費で使うものであり、これに高い所得税をかけてしまうのは、かわいそうだからでしょう。
そこで、退職金をもらった場合には、下記の計算式となり、退職所得控除額を差し引けて、かつ1/2にしたあと、所得税がかかる仕組みになっています。


(退職金 - 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得
勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A - 20年)


例えば、30年間働いて、2000万円の退職金をもらうと、所得税は、40万円となります。
これならば、40万円(所得税)÷2000万円(退職金)=2%となり、先ほどの35%と比べると、この差が分かってもらえるはずです。
では、個人事業主である農業事業者が、自分に対して退職金を支払うことができるのでしょうか?

答えは、個人事業主である農業事業者が、自分に対して、退職金を支払うことはできません。
それどころか、農業事業者が父親とすれば、その配偶者である母親に対しても、退職金を支払うことができないのです。
さらに、生計を一にする子供がいれば、同じように退職金を支払うことができません。
ここで、「生計を一にする」とは、父親が、常に子供の食費、水道光熱費、学資金、療養費等を一緒の財布から支出している場合を指します。
父親と子供が同居していなくても、財布が一緒ならば、生計が一と判定されます。
ということで、個人事業主である農業事業者は、退職金で所得税が安くなる制度を利用できないのです。
そこで、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立して、父親が代表取締役になれば、辞めるときに、退職金を支払うことができます。
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)と父親の財布が一緒になることはないため、父親と生計が一となる母親でも、子供でも、辞めるときには、退職金を支払えるのです。
そこで、毎年の給料を減らして、会社にお金を貯めておき、それを退職金として支払えば、かなりの節税対策となります。

ただし、このとき注意すべきことがあります。
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立して数年後に退職金を支払ったあと清算して、また農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を作り、数年後に退職金を支払うことを、連続させていけば、簡単に節税できてしまいます。
そこで、取締役などに就任して、5年以下の勤続年数の場合には、下記の計算式になることが決まっていて、所得税は安くならないのです。
5年以下とは、勤続年数に1年未満の期間があれば、切り上げられます。
例えば、4年5ヶ月であれば、勤続年数が5年以下に該当し、5年1ヶ月であれば、勤続年数が6年となり、該当しないことになるのです。


退職金 - 退職所得控除額 = 退職所得
勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
(80万円に満たない場合には、80万円)


もし、取締役に就任した期間が5年で、2000万円の退職金をもらうと、所得税は、620万円となります。
とすると、620万円(所得税)÷2000万円(退職金)=31%となってしまいます。
やはり、勤続年数が短いため、退職所得控除額が小さくなり、かつ1/2にしてくれないことが、実効税率が高くなる原因です。
特に、1/2にならないことで、累進課税の制度が効いてしまっています。

このように、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)から退職金を支払い、所得税を安くしたいのであれば、できるだけ早く設立して、取締役に就任することが必要となるのです。
なお、勤続年数が長い方が、退職所得控除額が大きくなり、得になることが分かります。
このとき、個人事業主である農業事業者として働いていた期間が、退職所得を計算するときの勤続年数に含むことはできないのか、という疑問が湧きます。
結論としては、勤続年数を通算することはできません。
あくまで、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の取締役に就任したときから、勤続年数がカウントされることになります。

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